平成20 年12 月に国税庁から公開された「役員給与に関するQ&A」に関して、役員の報酬をある程度自由に減額できるようになったと勘違いされている方も少なくないようです。実際は、そのようなことはありません。減額するには、税務的に合理的な理由が必要です。
役員報酬は、原則、理由なく中途改定できません。ただし、利害関係者との関係上減額せざるを得ない場合は、改定事由に該当し、減額分は損金算入されます。
①定期同額給与とは、その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与でその事業年度の各支給時
期における支給額が同額であるもの等をいいます。
②定期同額給与の改定が認められる場合は、次の場合で、その前後それぞれの報酬が同額であれば認められます。 イ. 期首から原則3ヶ月内の改定。 ロ, 役員の職制上の地位の変更、職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情(臨時改定事由)によりされた改定。 ハ、その事業年度において法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由(業績悪化改定事由)によりされた減額改定。
③業績悪化改定事由の例示 財務諸表の数値が相当程度悪化したことや倒産の危機に瀕したことだけではなく、次に掲げるような第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じている場合も改定事由に該当することとされています。 ① 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から役員給与の額を減額せざるを得ない場合 ② 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合 ③ 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役員給与の額の減額が盛り込まれた場合
経営者からみれば、役員として臨機応変に対応することが責任ある執行だと思うので、もっと弾力的な取扱いを認めて欲しい、ということになろうかと思います。しかし、同族会社の場合は、役員が大半の株式を所有
している場合が一般的ですので、役員給与の改定は容易に行われる状況にあります。このため、役員給与の額を減額する場合は、その減額せざるを得ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があるのです。 なお、業績の目標値に達しないとか、一時的な資金繰りの悪化といった事実は、業績悪化改定事由に該当しませんので留意が必要です。
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