決算を行うための会計基準が大幅に変わろうとしています。国際会計基準(IFRS)に基づいて会計処理を行うべきであるという方向であります。
企業の資金調達の国際化に伴い、投資家にとってみれば、投資先の企業がそれぞれの国の会計基準に基づいて財務諸表を作っていたのでは比較可能性がなくなり、投資先に関する意思決定を誤る可能性が生じてしまいます。また、決算書(財務諸表)を作成する企業側にとってみても、上場する国々によって会計基準が異なり、その国ごとに決算書(財務諸表)を作成し直さなければならないのであれば、コストがかかってしまいます。このような背景のもと、国際的な資本市場において資金調達を行う企業に関しては、全世界で承認され遵守されることを目的としたIFRSに基づいて、決算書(財務諸表)を作成し、報告しなければならないという要請が高まってきているのです。
日本でも、まず07年に国際会計基準審議会(IASB)と我が国の会計基準を制定している企業会計基準委員会(ASBJ)との間で、IFRSと日本の会計基準をコンバージェンスしていく合意がなされました(東京合意)。この合意に基づきプロジェクト計画表(コンバージェンス関連項目)が定められ、計画表に基づきコンバージェンスの作業が進められています。さらに、金融庁は09年6月に「我が国における国際会計基準の取扱いについて(中間報告)」を発表し、我が国企業に対するIFRS適用についての将来的な展望を示しました。10年3月期から、一定の条件の下に、上場会社の連結財務諸表(連結決算書)について国際会計基準(IFRS)の任意適用を認めました。また、上場会社の連結財務諸表(連結決算書)について12年を目処にIFRSを強制適用するかどうかの有無を判断し、強制適用する場合においては15年ないしは16年から強制適用する事としました。
会社法あるいは税法との関連で、中小企業の会計制度にどのように国際会計基準(IFRS)が適用されてくるかは現段階では不明です。国際会計基準(IFRS)の目的等から考えて、国際的な資本市場に直面していない日本の中小企業においては、いきなり国際会計基準(IFRS)への適用が迫られるということはないのではないかと思います。なお今年1月22日に、ASBJ等が中心となり「非上場会社の会計基準に関する懇談会」の設置に向けての動きがありました。
ただし、上場企業の子会社、関連会社においては、上場企業が連結財務諸表(連結決算書)について国際会計基準(IFRS)を適用して作成しなければならないため、(1)国際会計基準(IFRS)に準拠した決算書(財務諸表)を作成して、上場・公開している親会社に提出、(2)日本基準から国際会計基準(IFRS)へ決算書(財務諸表)を組み替えるための基礎情報を親会社へ提出、のいずれかの対応を迫られることになると推測されます。
国際会計基準(IFRS)は、売上の計上基準等が変更されることと等、今の日本基準より大幅にかわります。場合によっては、業務の方法あるいはコンピュータシステムの変更が必要になることが生じる可能性もあり、国際会計基準(IFRS)の導入にはある程度の時間をかけて準備する必要があります。中小企業といえども、将来、株式上場を目指す会社は中小企業といえども、国際会計基準(IFRS)導入を行う必要があります。
株式上場をお考えの方、国際会計基準(IFRS)の導入等を行うかどうか、導入したが具体的にどのように行えばよいのか等、疑問点ございましたら、当事務所へ、お気軽にお問い合わせください。