①DES(デッド・エクイティ・スワップ) 昨今の景況感の悪化により、財務内容が傷んでいる会社も少なくありません。本業では営業利益はでているが、借入金との返済が多く、資金繰りに苦しんでいる場合は、借入返済額を軽減すれば再生していくことが可能であります。その1つの方法が、DES(デット・エクイティ・スワップ)と言われている方法であります。DES(デット・エクイティ・スワップ)とは、デット(債務)からエクイティ(資本)に交換する、つまり転換すること、債務の資本化行うことであります。具体的には、債権者が有する債務者宛の債権を現物出資することによる、資本金の増加を行うことであります。代表的なものが、金融機関からの借入金を資本金に振り替えることであります。一般的に過剰債務企業を再生する場面で、債務の圧縮手段として利用されます。債権者からすれば債権が投資有価証券(株式)に交換されることになります。債務者側のメリットとしては、有利子負債の減少による負債の返済不要、返済金利負担軽減による資金繰りがよくなること、債務超過の解消による財務体質改善(負債の減少、純資産の増加)が図られることであります。債権者側のメリットとしては、債務者企業の過剰債務圧縮により、キャッシュフローが改善し、残債権の回収可能性が当初より高まり、貸倒引当金の設定及び貸倒損失のリスクが軽減することであります。また、DESは債権放棄とは異なり、債務者企業の株式を取得するため、経営監視ができること、あるいは、将来、債務者企業が再生を図り、企業価値が上昇した際には、当該株式を売却することにより資金の回収を図ることができます。
そのような意味から払い込むべき金銭がなくても、金銭債権を現物出資することにより、債権者及び債務者企業それぞれの目的を達成することが出来るため、双方にとって有用性のある仕組みであるといわれています。
②債権の時価が券面額を下回っている場合は債務消滅益が発生 法人税法においては、新株発行によって増加する資本金等の額は給付を受けた金銭以外の資産の時価となり、現物出資であるDESの場面では債権の時価相当額になると定められています。 したがって、DESの対象となる債権の時価がその券面額を下回る場合には、債権の時価相当額が資本金等の額となり、消滅する債務の額面額との差額は債務免除益として認識されます。それゆえ、税務上の繰越欠損金より債務免除益が多い場合、資金流入がないにも関わらず、課税が発生し資金拠出が発生する場合もあり、キャッシュフローに影響を及ぼす可能性がありますので、留意が必要です。ただし、会社更生手続、民事再生手続及び一定の私的整理の場合には、DESによる債務免除益は期限切れ欠損金の損金算入の対象、つまり債務免除益と期限切れの繰越欠損金と相殺できますので、、資金流入にないにもかかわらず、課税が発生し資金拠出が発生する可能性はかなり低くなるのが一般的であります。
③債務免除益に対する課税回避するための現金振替型によるDESの検討 現金振替型は、債権者の債務者宛債権をそのまま直接、資本金に振り替える方法とは異なり、債務者企業が債権者に対して第三者割当増資を実施し、債権者からの増資資金を使って、債権者に対して借入金の返済を行います。 これにより、債権者は第三者割当増資による債務者企業の株式を取得すると同時に、債権の回収が行われ、また、債務者企業側においては、資本の増加と同時に債務の返済が行われることになり、結果的に現物出資型のDESと同様の効果を得ることができます。この手法は擬似DESとも呼ばれますが、第三者割当増資及び債務の弁済はそれぞれ独立した行為となります。したがって、この場合債権の券面額で返済して 第3者割当増資行う場合、新株の発行価額は時価となりますので、②のような 債務免除益の問題は発生しません。ただし、②と比して、債務者企業は債権者側に対する新株の発行株式数は多くなりますことにご留意ください。